身近でかわいい両生類、
トノサマガエル
No66(2004年06月掲載)
 日本では本州、四国、九州に広く分布しているアカガエル科のトノサマガエル。不思議なことに、仙台平野から関東平野、信濃川流域には分布せず、かわりに、よく似ているトウキョウダルマガエルが分布し、トノサマガエルがいない地域では、トノサマガエルと呼ばれていることが多い。また、本州(東海、近畿、中国地方瀬戸内海沿岸)には、やはりよく似た形のダルマガエルが分布している。
 カエルは、稲や野菜を荒らすこともなく、肉食で稲を食べる昆虫などを食べる有益な生き物だ。少し前まで、田んぼに行くと、人が近づいてくるのに驚いた数多くのカエルが、畔から飛び込む姿が見られた。水田の宅地化が進むにしたがって、その姿も見られなくなっている。。
 トノサマガエルのオスの体長は55〜80ミリ。メスの方が一回り大きく体長は60〜80ミリ。雄雌は体色で見分けることができる。オスの基本色は黄緑色で背中の中央に一本の緑色か黄色の縦じまを持ち、繁殖期には黄金色になることも。メスの基本色は白色・灰暗色で、背中の縦じまは白色で太い。雌雄とも、背中に黒斑点が分布し、学名のRana nigromaculataは、「黒い斑点を持つカエル」という意味だ。トウキョウダルマガエルはオスが35〜70ミリ、メスが45〜85ミリ、ダルマガエルはオスが35〜60ミリ、メスが40〜70ミリで、やや小型で、トノサマガエルに較べて手足が短く、ずんぐりしているのが特徴だ。この特徴からダルマの名前が付けられたようだ。ダルマガエルは背中に隆起があり、縦じまもないか、ごく細い。トノサマガエルの産卵は年に一度だが、ダルマガエルは年に2回、産卵することもある。
 繁殖期は、田んぼに水が入る、4月〜6月頃。トノサマガエルのオスは1・6平方メートルほどのなわばりを確保して、水面に浮きながら「グルルル、グルルル、ゲゲゲー」とやかましく鳴き、メスが来るのを待つ。鳴き声の違いが、よく似たカエルの交雑を防いでいる。
 田植えの終わった水田や、その周辺の池などの浅い水場に、2千から4千もの卵を内包する直径20センチにも達する卵塊を産卵する。オタマジャクシは水中の石の表面などに付着している藻などを食べて、体長7センチ位まで成長する。後足が先に生えて、次に前足が生えて、尻尾が短くなる。オタマジャクシの時は、エラ呼吸しているが、成体になると肺呼吸になるので、長く水に入っているとおぼれ死んでしまう。
 気温が変わるにしたがって体温も変化する変温動物で、トノサマガエルは、後ろ向きに回転しながら、10〜15センチくらいの深さまでもぐり、土中で冬眠する。