フジの種はつるの
巻き方で見分けが
No65(2004年05月掲載)
 4月下旬から5月初旬、奈良公園から春日山にかけて、美しい薄ムラサキの花で目を楽しませてくれるフジ。万葉集にもよく詠まれ、古くから観賞用として藤棚を作って栽培されてきた。特に、家紋の意匠にもフジを用いた、藤原氏ゆかりの春日大社には、樹齢6百年を超えるという「砂ずりの藤」など、多くのフジが観賞できる。境内の神苑には「藤の園」が整備され、20数品種、約200本の藤が公開されている。
 花が風に吹(フ)き散(ヂ)る様が、名前の語源となった。また、長く伸びた花の房が垂れ、風に吹かれて優雅に揺れる様は、藤波と表現されていた。フジの様に、枝先の花軸から、花柄を持つ花が均等に多くつく花の咲かせ方は総状花序と呼ばれている。
 日本の固有種のフジは、ノダフジとヤマフジに分けることができる。ノダフジは、大阪の野田が、昔は花の名所としてして知られていたところから名付けられた。ノダフジの枝のつるの巻き上がる方向が右巻き(右から左へ、上から見て時計方向)なのに対し、ヤマフジは反対の左巻きなので簡単に見分けることができる。
 ノダフジは本州、四国、九州に分布し、花の数が多く、総状花序が30センチから1メートルと長く垂れ下がり、上から下へと開花するのが特徴だ。
 フジはマメ科で、10〜20センチのさやに入った種子を結ぶ。ひとつの花序に80個の花をつけたとしても、種子として完熟するのは1個か2個に過ぎない。10月から12月に黒褐色に熟し、さやが乾燥すると、大きな音を出して二つに裂け、種子を3メートル以上もはじきと飛ばす。種子の長さは16ミリ、幅19ミリ、厚さ4ミリでの楕円で、底が平らで表面が丸みのある平凸レンズ型だ。
 ヤマフジは本州では関東南部から西、四国、九州に分布し、ノダフジに較べ花の数は少なく、総状花序は20〜30センチ。いっせいに開花するのが、ノダフジとの違いだ。鉢植えでも楽しむことができる。マメ科で15〜20センチのさやに入った種子を結ぶ。種子の長さ13ミリ、幅16ミリ、厚さ4ミリの円形で、少しノダフジに較べて小さい。形は同じように底が平らで表面が丸みのある平凸レンズ型だ。種子の色はノダフジが明るい黄褐色暗灰褐色の斑紋を持つのに対し、ヤマフジは暗褐色地に黒の不規則斑紋がある。
 昔は、フジの樹皮から繊維を取り、織物や縄にして重宝されていた。現在でも、つるをかごに編んだり、工芸品の素材として使われている。葉を両手で持って下唇にあてて吹くと草笛になる。
 食用として試してみるのも良いかも知れない。若葉はゆでてお浸しにしたり、ご飯に炊き込んだりしても美味。生花は小柱や三つ葉と一緒にかき揚げにすると、彩りがきれい。花をさっと茹で、シュウマイやハンバーグの具に混ぜるのもお奨め。