鮮やかな黒色に実が熟す
ヨウシュヤマゴボウ
No59(2003年11月掲載)
 6月〜9月、白い花を咲かせるヨウシュヤマゴボウは、茎長1〜2メートルに達する多年草だ。秋になって実が熟すにしたがって、茎は緑色から赤く変色し、黒色の実と目立つコントラストを見せる。黒い実をつぶすと赤い汁が出る。昭和の後期、小学校の理科の時間で、色水の作り方の教材に使われていたこともある。
 明治初期に渡来した北アメリカ原産の植物で、全国の荒れ地や道端で、よく見かける。生命力は強く、茎長20センチ位でも実をつけることができる。アメリカでは「インクベリー」と呼ばれ、ポートワインやお菓子の色付けに用いられていたが、下痢を招くことから、現在は使われていない。布を美しいワインレッドに染めるが、十分に定着しないので、染色には不向き。紙を染めるぐらいなら、一部使える。この色素の大部分はフェトラッカニンという成分で、サトウダイコンの変種、アカヂシャに含まれるものと同じ。
 一方、ヤマゴボウの原産は中国大陸。飛鳥時代に渡来し、薬用に栽培されていた。根は漢方では「商陸」(しょうりく)と呼ばれ、利尿作用や血圧降下の効用があるとされていた。また、葉を便秘に有効な食べ物といわれていた。若葉はアクを抜いて食べるとおいしいと言われるが、体質によってはジンマシンや吐き気、下痢をおこすことも。ヤマゴボウには唐牛蒡、犬牛蒡などの別名もある。
 区別する意味で、北アメリカ原産のモノは、ヨウシュヤマゴボウ(別名アメリカヤマゴボウ)と呼ばれるようになった。ヤマゴボウの果実が上を向いている柄につくのに対し、ヨウシュヤマゴボウは、果実をつける花穂が長く垂れ下がるので見分けることができる。
 果実に毒性はないが、根には多量の硝酸カリとアルカロイドのキナンコトキシンを含み、有毒植物とされ、吐き気、おう吐、下痢などの中毒症状が報告されている。漬物などでおいしく味わうことのできるヤマゴボウは、キク科のモリアザミの根を材料にしている。もっとも最近では、お土産品の漬物などは、ほとんどが野菜のゴボウが原材料のようだ。
 春に種子から発生し、茶褐色を帯び、無毛ですべすべしている茎を伸ばし始める。盛んに枝分かれし、やがて人の大きさ位の大きな株になる。葉は両端が細くとがる、大きな楕円形状で、約10センチ〜30センチと大きく、やや短い葉柄の先に互生する。夏に、枝先に多数の紅色を帯びた白色の花を、房状の穂のように垂れ下がらせる。秋に入るとブドウの房ように果実を付ける。果実は直径約8ミリで、小さいカボチャのような形の平たい球状。仲間には花の色が淡紅色で、果実がほぼ球形のマルミノヤマゴボウもある。
 地上部は1年性だか、根は多年性で大きな塊になる。根を切ると年輪のような同心円状の模様が見られる。