悪者でなかった
セイタカアワダチソウ
No57(2003年09月掲載)
  昭和40年代、日本の風景を変えてしまう程、急速に勢力を強め、渡来植物の「悪役」の代名詞扱いされたセイタカアワダチソウ。北アメリカ原産の多年草で、明治15年以前に、すでに観賞用として輸入されていた。高さが2〜3メートルに達するところから背高泡立草の名前が付いた。冬になると一本に多いもので5万個という綿毛状の種子を付ける様が、泡立っているように見えるところから泡立草と呼ばれるようになった。仲間にオオアワダチソウがあるが、セイタカアワダチソウの茎や葉に短毛がはえ、手で触るとザラつくところから見分けられる。原産地の北アメリカではゴールデン・ロッド、金のムチと呼ばれ、美しい植物として人気がある。
 一時期、花粉症の元凶と思われていたのも、悪役扱いされる理由になっていた。実際は、花粉を飛ばして繁殖する風媒花ではなく、蜜を虫に与え、花粉を付けて運ばせている。花の少ない11月頃まで咲いているので、養蜂家や虫にとっては、貴重な蜜源植物だ。セイタカアワダチソウと同時期に花を咲かせる風媒花のブタクサと取り違えられていたようだ。
 小さい株で約700個、大きい株では、約4000個の花を付ける。花は直径6〜8ミリで、3〜7個の管状花を中心に、周囲を9〜14個の花弁状の舌状花で囲んでいる。管状花は雄しべと雌しべを持っているが、舌状花には雄しべがない。舌状花がまず柱頭を出し、次に管状花が花粉を放出する。花粉放出は一日で終わるが、舌状花の柱頭はしおれることなく、受粉可能な状態で、虫が花粉を運んで来るのを待つ。
 種子を風で飛ばす他に、地下茎を伸して大群落をつくる。1メートル四方で地下茎の総延長が24メートルに達する高密度で、翌年に芽を伸すと、その密度が80〜100本に達することもある。さらに、雨で植物体が洗われた時、種子発芽を抑制する物質〈気体〉を発生させ、純粋群落を増殖させる。この作用はアレロパシー〈多感作用、遠隔作用〉と呼ばれ、ヨモギやヒメジョオン属の植物も同様の能力を持っている。
 セイタカアワダチソウは、茎がなく、葉が地表にへばりついたようなロゼット〈小さなバラという意味〉と呼ばれる姿で越冬する。純粋群落が数年間続くと、立ち枯れした茎が、地表のロゼットに太陽光が届くのを阻止し、群落の勢力を弱め、やがてススキが入り込み、取って代わられる事もある。毎冬に立ち枯れした茎を刈り取った方が、ロゼットに光が届くので、セイタカアワダチソウの勢力が続く結果に。また、増え過ぎると、自らのアレロパシーによって自家中毒症状で滅びることもある。
 数年ごとに、県内の高校教員や高校生によるセイタカアワダチソウの分布調査が行われているが、最近は減少しつつある。まっすぐな茎を乾燥させ、すだれなどにも加工されている。