「鮮やかな黄金色の花が
印象的なサンシュユ」
No52(2003年04月掲載)
 3月〜7月、庭や公園で、黄色い花を数多くつけて目を楽しませてくれるサンシュユ。樹高が3〜10メートルにも達し、幹の太さも30センチを超えることもある、ミズキ科の落葉小高木で、中国・朝鮮半島原産で、薬用植物として、江戸時代(1720年頃)に渡来した。名前も漢名の山茱萸を、そのまま用いている。宮崎県の民謡の「稗搗節」(ひえつきぶし)に出てくる“庭のサンシュの〜”は、ミカン科の山椒(サンショウ)だろうと言われている。椎葉村に伝わる源平時代(1100年頃)の悲恋物語の歌で、九州では山椒をサンシュの木と呼ぶ所も多い。サンシュユは秋には果実と紅葉も楽しめ、早春に、枝一面に黄色く開花する様子から、縁起の良いハルコガネバナとも呼ばれている。
 樹皮は灰黒褐色で、不規則に薄く剥がれ、剥がれた後は灰褐色の木肌が現れる。長さ4〜12センチ、幅2〜7センチ、広卵形の葉が、枝先に集って対生している。側脈が5〜7対あり、葉の裏面には全面に伏毛があり、脈腋(葉脈の分かれ目)に褐色の毛があることが、同属のミズキやハナミズキの葉にない特徴となっている。
 サンシュユの花で、ひとつの花のように見えるのは、複雑な構造を持つ、たくさんの花の集合体だ。よく観察をして、スケッチをすると興味深い。葉が展開する前に開花するので、その美しさが際立つ。短枝の先に直径2〜3センチの散形花序を出し、淡黄色の小さな花を約20〜45個付ける。花序の基部には、小さい楕円形の4枚の総苞片がつく。小さな花は、先がとがって反り返る4個の花弁をで構成され、長さ2ミリの雄しべが4個斜上する。基部は蜜を出す隆起した肉質の花盤に囲まれる。盆栽として鉢で室内で育てられることもある。
 9〜11月になると、12〜20ミリの実が赤く熟す。光沢のある赤い実が目立つ所から、アキサンゴ、サンゴバナと呼ばれることもある。
 完熟した実を熱湯に少しひたして、核(種子)を取り出し、果実だけを天日乾燥させたものが、生薬「山茱萸」として漢方に用いられている。腰がだるく力が入らない時の強壮や、尿をもらす人に腎臓に力をつける薬効があると言われる。一日に3〜5グラムを400ccの水に入れ、30分ほど煎じて3回に分けて服用する。1800年以上前に書かれた、漢方の古い医書にも記載されている処方「八味地黄丸」にも、生薬「山茱萸」が用いられている。中年以降の老人のための処方で、のどが乾く、足腰の冷えがあって排尿回数が多く残尿感があるような場合に効き目がある。
 民間療法としては、冷え性や低血圧症、不眠症、健胃、強壮などに効果のある薬用酒として用いられている。生薬「山茱萸」200グラムと同量の氷砂糖をホワイトリカー1.8リッターに漬け込み、2〜3ヶ月冷暗所に置いて、材料を引き上げ、こしてから飲用する。