「春の到来を香りと
黄色の花で告げるロウバイ
No49(2003年01月掲載)
 冬枯れの季節、ひときわ鮮やかな黄色の花と、馥郁とした甘い香りで楽しませてくれるロウバイ。花の形が梅に似ているので梅の名がつくが、ロウバイ科に属する。中国原産の落葉低木で、十七世紀初期に朝鮮から渡来した。観賞用に品種改良され、色々なタイプの花がある。臘梅とも蝋梅とも書かれるが、臘梅は旧暦の臘月(十二月、新暦の一月)に花を咲かせることにちなみ、蝋梅は花が蝋(ろう)細工の様な質感を持っていることに由来する。中国原産の梅という意味で、唐梅とも呼ばれていた。花材に乏しい時期だけに、昔から春を告げる花木として用いられることが多い。現在は欧米でも栽培されている。英語名は Wintersweet。樹高は2〜4メートルに達するが、根元から多数の幹が叢生(そうせい)しているので、梅とはまったく趣が異なる。1〜3月、葉に先だって、直径2〜2・5センチの花を咲かせる。
 本来のロウバイの花は、内側の花弁が暗紫色だが、その変種で中心部の花弁も黄色いソシンロウバイが、最近は好んで植えられている。ロウバイの芳香はボルネオール、リナロール、カンファール、シネオール等の精油成分が合わさって生れている。
 花は下向きまたは横向きにつく。花弁と萼(がく)との分化が明確でなく、たくさんの花被片がらせん状につらなる。花の中心のツボ状の花托の中に多数の雌しべがあり、それを囲むように5〜6本の雄しべがある。花が咲き終わると、花托が大きくなって長い卵形のミノムシの巣に似た偽果となる。一般的には、雌しべの下の子房がふくらんで実となるが、ロウバイのように子房以外が実となる場合は偽果と呼ばれている。
 偽果は次第に木質化して、9月頃、褐色に熟し、1〜4個の痩果(そうか)が内部にでき上がる。痩果は紫褐色の長楕円形でやや扁平、長さ12ミリで、背面と腹面にそれぞれ細い1個の縦隆条を持つ。昨年熟した偽果が、今も枝に残っていたら、内部を観察し、花といっしょにスケッチしてみよう。葉は比較的大きく、長さ15センチ、幅4〜5センチ位の卵状楕円形で互生し、その表面はざらついている。もし、庭に植えるときは、移植が難しいので、場所の選定を入念に。日当たりと水はけの良い場所に植えると、たくさんの花を咲かせる。
 漢方でも、せきやたん、解熱に、開花前のつぼみが薬効があるとして用いられてきた。1月中旬頃につぼみを採取し、風通しのよい所で日陰干しにし、煎じて服用する。また、火傷には、干したつぼみを食用のごま油に漬け、この油を患部に塗って用いていた。