「部屋のアクセントに、
サルトリイバラのリースを
No48(2002年12月掲載)
 先月紹介したヒヨドリジョウゴ同様、赤い実をつけるツル性の植物だか、サルトリイバラはトゲを持つのが特徴だ。和名は「猿捕りイバラ」の意味で、この茎が絡みついてているヤブに猿を追い込んで生け捕りにしたから等と伝えられる。葉柄の付け根に託葉(たくよう)の先が伸びた巻きひげがあり、近くにある木に絡みつきながら、よじ登るように伸びる。日本各地の山野で見かけることができ、高さ3メートル位まで成長することもある。日照を好むので、林の縁や南の斜面に見つけることが多い。その形からバラ科と思われがちだか、ユリ科に属している。
 ありふれた植物なので、ゴサイバ、カキイバラ、サイキラ等、多くの方言名を持つ、サンキライ(山帰来)と呼ばれることもあるが、日本には自生していない、中国、インド原産のユリ科のツル性の低木を山帰来として漢方で用いるので、和山帰来として区別する。山帰来とは、重い病気を患い山に捨てられた老婆が、この根を食べて元気を回復し、里に戻ってきたという意味だ。サルトリイバラの生薬名は「ばっかつ」と呼ばれ、にきびなどの腫れ物、むくんだ時の利尿に用いられる。10月〜12月、葉が枯れたら根茎を採取し、細かく切って天日で乾燥し、煎じて空腹時に飲用した。
 今は野趣に富んだ花材として、竹で編んだカゴなどに活けると風情を演出できる、と人気を集めている。特に赤い実を付けている時期は、ドアリースの素材としてもピッタリ。雌雄が異なる株になっていて、4月から5月頃、雌株から枝を出して、黄緑色をした六弁の小さな花を房のように多数咲かせる。葉の形は円形もしくは楕円形で、大きいものだと長さ幅、共に10センチ位にまで育つ。その形がみみずくの顔の形に似ているのでミミズクイバラ、亀の甲に似ている所からカメイバラ、カメノハと呼んでいる地方もある。
 葉は厚く丈夫で光沢があり、あまり物がくっつかないので、まんじゅうや団子を包んで蒸すのに利用されていた。五月の節句に柏餅のように、サルトリイバラの葉に餅を包んで食べる風習もある。アウトドアでコップや小皿の代用として重宝する。生の柔らかい稚葉なら、天ぷらにしても美味しい。赤く熟した実は約1センチ、リンゴのような歯触りだが、おいしくないので食用には適さない。実は焼酎やホワイトリカーに漬けて薬用酒にして楽しむのがお奨め。根茎は太くて屈曲しているので、採取は重労働になるが、自宅への移植も可能だ。