「胃や腸まで脱皮する、
アメリカザリガニ
No43(2002年07月掲載)
 水田や用水路など、水深の浅い泥質の止水で容易に見つけられ、子供たちに親しまれているアメリカザリガニ。その名の通り、北アメリカ東南部地域が原産地で、1930年6月に、食用ガエルのエサとして、神奈川県岩瀬ガエル養殖場に約20匹が放たれたのが最初。やがて大雨の出水ごとに逃げ出し、1955年頃までに本州・四国・九州全域に生息するようになった。
 日本にも在来種のザリガニが、北海道南部地域、青森県、秋田県大館、岩手県福岡町の水質のきれいな谷川に生息している。アメリカザリガニと身体の形はよく似ているが、成体でも全長5〜6センチと、やや小型。生息数を減らしているが、好む水質や水温が異なるので、アメリカザリガニの分布拡大が、衰退の要因ではないようだ。増えすぎて、田んぼのあぜ道に穴をあけたりするので、農家では害虫扱いされている。また、トンボの幼虫をエサとするので、トンボ減少の元凶とされている。
 糸にスルメをつけて、アメリカザリガニの居そうな所に投げ入れると、ハサミで掴むので、容易に捕まえることができる。水槽に砂と水を入れ飼育観察し、行動や脱皮の様子を観察してみよう。
 飼育観察で気をつけたいのが、個体の数だ。一匹だけ飼うなら、幅30センチ位の水槽でも十分。もし、繁殖させたいのなら、最初から幅60センチ位の水槽が必要だ。アメリカザリガニは本来「エラ呼吸」なので、長期間飼うなら水に溶けている酸素の量を維持するため、エアレーション設備(エアーポンプ)も必要。また、水質の維持にも気配りが必要。濁った水質の所に棲めるアメリカザリガニも、腐敗した水の中では病気になってしまう。「熱帯魚用の餌」を組み合わせたり、水草を与えたりすると、比較的、水質の劣化を防げる。
 アメリカザリガニを背面から観察すると、頭と胸と腹の三部があり、第一の脚が大きなハサミになっていて、オスの方が大きくて閉じるとぴったり付く等の特徴がある。繁殖させるためには、オス一匹に2〜3匹のメスを。また、同じ穴に棲むカップルを捕まえてくると繁殖の可能性が高い。
 アメリカザリガニは脱皮を繰り返し、体形を成長させる。口の中や胃も脱皮をするので、脱皮した胃や腸も観察できる。第一触覚のつけ根には「聴のう」という毛でおおわれた小さな穴があり、砂が入っていて身体のバランスをとる。脱皮の時に砂が出てしまうので、脱皮後、すぐにこの穴に砂を入れる。