「集団越冬する
ナミテントウムシ」
No37(2002年01月掲載)
 嫌われることの多い虫の仲間で、若い女性の愛唱歌のタイトルになるほど愛されているのがテントウムシだ。英語でも「Lady Bird」とか「LadyBug」と呼ばれている。漢字で書いても天道を知る虫「天道虫」だから品格も良い。テントウムシは一番枝の高いところから飛び立つ習性を持ち、そこから太陽を目指して羽ばたくように感じさせるのが名前の由来となったようだ。とにかく、自然界で目立つ赤と黒の斑紋を持ち、半球の体形も可愛いところから、昔から注目を集めていたのだろう。もっとも、目立つ色は外敵にも見つかりやすい。危険が迫ると死んだふりをする、擬死によって難を逃れる。これは仰向けになって動かなくなることで、危険が去るとまた動き始める。また、足の関節から苦味のある臭い黄色の液体を出し、まずい虫だと知らせる事も行う。
 テントウムシの仲間は世界に4千種以上、日本にも約160種が生息し、肉食と草食に大別できる。肉食のテントウムシは、植物の樹液を吸って害を与えるアブラムシ(アリマキ)、カイガラムシを食べてくれる益虫だ。最近は、無農薬農法を試みる農家が、温室などに放ち、農薬の代用としている。一方、ジャガイモなどナス科の葉を食べる草食性の種は害虫として扱われる。
 もっとも、私たちが目にすることの多いのは、肉食性のナナホシテントウムシとナミテントウムシで、どちらも成虫で体長7〜8ミリ位だ。ナナホシテントウムシは上翅に七つの斑紋があるので分かりやすいが、ナミテントウムシの斑紋を思い浮かべることの出来る人は少ないはず。大きく分けると下の4種の斑紋がある。黒色に赤色紋が多数あるのが斑(まだら)型、地色が赤色のが紅型、黒地に赤色紋が四つあるのが四紋型、黒地に赤色紋が二つあるのが二紋型と呼ばれている。この紋の型は遺伝によって決まり、地域によって出現の割合に偏りがあり、寒い地方では二紋型、暖かい地方では紅型が多く見られる。別な型の斑紋の親が交配すると、さらに複雑な斑紋の子孫が誕生する。
 ナミテントウムシには数十匹以上で集団越冬する習性が有り、もし見つけることが出来れば、いろいろな斑紋のスケッチをし、その割合を調べよう。落ち葉の裏や家の壁、木のうろの中などに見つけることができる。ナミテントウムシが仮眠して冬を越すのに対し、ナナホシテントウムシは北海道と東北の一部を除いて、畑や草地に餌の少ない夏を夏眠して過ごす。ナミテントウムシは夏場は樹上で生活するので、餌のアブラムシの不足の心配はない。