タイガースカラーのジョロウグモ
No34 (2001年10月掲載)
 秋になると家の近辺や雑木林・草地でよく目にするのが、黄色と黒のタイガース・カラーのジョロウグモだ。メスは体長30ミリ位まで成長し、加えて長い足がはえているので、ものすごく大きく見え、気味悪がられる。しかし、よく見るとあでやかな姿で、名前も位の高い女官、上臈(じょうろう)に由来し、みやびやかなクモという意味を持っている。一方、オスは体長10ミリ位までしか成長せず、7回の脱皮を重ねて成体となり、8月上旬からは自分では網をはらず、メスの網に居座る。
 幾何学模様のクモの網も、観察すると色々なことが分かる。ジョロウグモのものは横から見ると三層構造になっているのが特徴的だ。お尻の先に3対(6個)の糸いぼを持ち、何本もの糸が出るが、空気に触れると一本の強い糸になる。タテ糸はクモが歩くための糸で、ねばり気がなく、ヨコ糸には粘球(ねばる球)がついていて、これで獲物を捕獲する。この本網の前後にこぶりで荒い補助網を張っている。トンボやチョウチョ、ガなどをエサにしているジョロウグモは、比較的高い位置に網を張るが、バッタなどの虫をエサにしているコガネグモは草地の低い位置に網を張るのも興味深い。よくエサがとれる網は補修して使い続けるが、エサが捕れないと夜中から朝にかけて古い網をたたんで、別な場所に新しく張り替える。 体外消化というエサの食べ方も、ちょっと不気味だが興味深い。網に獲物がかかると、一気に噛み付いて上あごの牙から毒液を注入、動けなくなったら糸でくるんで中央に運ぶ。大あごで噛み付いてこんどは消化液を注入、エサの内蔵がジュース状になったら、その液体を吸い出す。獲物の体や羽は消化液で溶けないので、補助網にぶらさげる。
 メスの網に同居したオスは、ほとんどエサを食べずに交配の機会を狙う。メスは9月中旬に8回目の脱皮を終え、成体になる。この頃の網には、必ずオスが同居している。1ヶ月近く待っていたオスは精液を、メスの受精のうという袋に注入する。10月中旬から11月にかけて暖かいの日の夕方、神秘的な産卵がはじまる。網を離れたメスは、午後8時頃から約2時間をかけ、木の幹に白い糸でシーツを張り、その上に赤い卵のかたまりを産み落とす。卵を白い糸で作った布でおおい、くるんで楕円形の卵のうを作る。さらに卵のうに木の皮や枯れ葉などを貼り付けカモフラージュし、夜明け近く産卵を完了する。
 5月上旬、越冬した卵のうから、体長0・5ミリ位の真っ赤な子グモがふ化してくる。数日間、子グモたちは集団行動した後、木の枝の先に登っていき、お尻から出した糸を風に流してバラバラに巣立っていく。6〜7月頃は、分散した子グモたちの作った、木の枝や葉の間に5センチほどの、かわいい丸い網が観察できる。