「極寒に赤く実るフユイチゴ」
No26(2001年02月掲載)
 2月といえば、やっと春の訪れを待つ気持ちが頭をもたげてくる頃だが、実際にはもっとも寒さの厳しい時期でもあり、外を歩いていても首もとをすぼめてしまいがちだ。そんな極寒の季節に、野山であかあかとした実をつけるのがフユイチゴ。別名、カンイチゴともいう。白い花を咲かせるのは8月〜10月頃だが、実が熟すのは今である。日当たりのいい斜面で実をつけるので、目にもとまりやすいはず。
 細く褐色の短い毛を密生させた茎が、匍匐して所々に匍枝を伸ばし、先端に新しい苗をつくって増えていく。葉は5〜10センチのハート型に近い形で、浅く5裂している。
 茎から葉の出る分かれ目の部分に、ちいさな粒(小核果)が集まった、径7〜10ミリの実がついている。小核果の表面の先に細長い花柱が残っている。
 このフユイチゴの楽しみは、食べること。ヨーロッパでクリスマスケーキを飾るイチゴといえば、この種をさしたそうだ。ひとつひとつが小さいので、根気よく、楽しみながら集めたい。そのままでも食べられる。ふつうのイチゴの味に馴染んだ舌には、格別美味しいと感じられるかどうかはわからない。しかし、山菜のない真冬に、緑の葉と赤い実で、生命力を感じさせてくれるフユイチゴを食するのは、喜ばしいものがあるだろう。
 イチゴ酒にするには、果実300グラムに砂糖100グラム、レモン2個をホワイトリカー0.9リットルに入れる。約2ヶ月で赤く熟成する。引き上げた果実はジャムに利用することもできる。