「お正月にかかせないナンテン」
No25(2001年01月掲載)
冬の寒い日には、家の庭先に植えられたナンテンの、燃えるように赤い実の色が目をひく。寒さを一瞬やわらげてくれそうな気さえする。
 高さ1〜3メートル、メギ科の常緑低木で、難を転ずるという意味から、縁起のよい薬用植物。お正月の生け花には必ずといっていいほど用いられる。のどあめの商品名にもなっているとおり、古くから、果実は百日咳や喘息の薬として、また、葉は煎じて目薬としても用いられてきた。料理の飾りにもよく使われる。ナンテンで作ったお箸は、食あたりを防ぎ、長寿を祈願すると好まれる。不浄を浄化するとのことで、お手洗いの外に植えられることも多い。雪ウサギを作って実を目に、葉を耳にして遊んだ人もいることだろう。人々の生活にもっとも馴染みの深い植物のひとつと言える。
ナンテンの一枚の葉
葉身が二つ以上の小葉に分かれた葉を複葉と呼ぶ。中心の枝で一回、そこから派生して二回、さらに派生して三回。三回三出羽状複葉になっている。
 そんなナンテンの、ちょっと意外な話といえば、「三回三出羽状複葉」(さんかいさんしゅつうじょうふくよう)といわれる葉のことだ。
 右のイラストにあるナンテンの葉。これで一枚。雪ウサギの耳は、実は「葉の一部」だったということになる。複葉といわれる葉は、一見したところ複数に見えるが実は一枚の葉、というもの。これをいったいどうしてみわけるのかというと、葉柄と茎の間に次なる葉の芽、側芽がついているかどうかがポイントになる。雪ウサギの耳を取っても、その元には側芽はない。右図の状態を一枚として、その葉柄と茎の間にだけ、芽があるのだ。
 お正月料理に本物のナンテンの葉が添えられていれば、一度確かめてみよう。こたつを囲み、家族でナンテン談義を楽しんでみては。