「初冬に花咲くヒイラギ」
No24(2000年12月掲載)
棘のある葉は、若い枝につく。
葉の丸くなったヒイラギ。
 木ヘンに冬と書いて柊。晩秋から初冬にかけて花をさかせるヒイラギは、冬の訪れを告げる常緑小高木だ。のこぎりのような棘のある葉を鬼が嫌うとされ、昔から厄よけの木として屋敷の鬼門に植えられる。また、節分には、イワシの頭をこの木の枝の先に刺して、門に飾る風習もある。匂いのするものを家の入り口において、邪気が入らないようにするのだ。
 この、のこぎり状の棘は、古い枝や老木になると、だんだん丸みをおびてくる。すっかり棘のなくなった葉を見ると、ヒイラギだとは気づかないほどイメージが変わる。こうなると、鬼を恐れさせる力がなくなるのか、厄よけのためには、剪定をきちんと行い、いつも棘のある葉をつけるよう手入れをする必要がある。
 「あいつも丸くなったなあ」などと言うときの、「年をとるほど角がとれて丸くなる」というのも、このヒイラギの習性からきている。
 さて、12月にヒイラギといえば、クリスマスのオーナメントを思いだす人も多いだろう。深い緑色の葉と赤い実のコントラストは、クリスマス気分を盛り上げてくれる。しかし、これはセイヨウヒイラギという別の種で、日本のヒイラギの実は黒っぽい紫色。クリスマスには出番がなさそうだ。ヒイラギは、雌雄異株で、どちらも花が咲くが、実を結ぶのは雌株だけ。雄株の花はめしべの発達が悪い。冬に咲いた花の実が熟すのは、6月ごろのことで、野鳥たちの餌になる。
 また、ヒイラギは、香りのよい植物として親しまれるキンモクセイと同じモクセイ科なので、葉の形も似ているし、白い花の香りもなかなかのもの。また、ヒイラギとギンモクセイとの交雑種で、ヒイラギモクセイという種もある。キンモクセイ、ギンモクセイのは葉に棘がないが、ヒイラギモクセイの葉の棘はヒイラギゆずりだ。