「ネコ科の動物が興奮するマタタビ」
No20 (2000年08月掲載)
山間の道路沿いを歩いている時に、白い葉の混じったつる性の植物をみかけたら、それはマタタビにちがいない。葉が白くなるのは、表皮の下に空気の層ができ、そこに光りがあたって輝くため。白と緑の葉の色のコントラストが美しい。全国各地の陽当たりのよい林の縁などに、分布しているので、見つけるのは難しくないはず。
 「ねこにマタタビ」でなじみの深い植物でもある。イリドミルメシンなどの物質が、ネコ科の動物を興奮させるのだという。名前の由来がおもしろく、昔、旅先で疲れた人がこの実を食べると疲れがとれ、また旅を続けられたというところからきているともいわれる。
 雌雄雑居性の落葉つる植物で、花型には2型がある。ごく小さく退化しためしべと多くのおしべを持った雄花と、よく発達しためしべと多くのおしべ(不稔で偽花粉)を持った雌花だ。
 最近、園芸品としても親しまれるようになったキウイフルーツも、マタタビの仲間。
 食用としても楽しみが多い。若葉を塩茹でにして、おひたしや酢みそあえにできるし、実は、果実酒になる。洗って水気をきった果実を2倍のホワイトリカーに漬け、好みで果糖を加えて、熟成させる。6ヶ月くらいたつと飲める。
 また、マタタビバエの産卵によってできた虫こぶになった果実は、球形で表面に凸凹がある。これは、木天蓼(もくてんりょう)と呼ばれ、漢方薬になる。
 さて、セイヨウが増えてしまうのはなぜだろう。それはカンサイと比べて一つの株に咲く花頭の数や、一つの花頭あたりの実の個数が圧倒的に多いこと。また、カンサイが春にしか咲かないのに対し、ほぼ一年中開花して種子をつけること。「そういえば、このごろは春に限らずタンポポを見かける」と気づく人もあるだろう。しかもその種子は、カンサイが花粉を運んでくれる昆虫がいないとできないのに対し、セイヨウは昆虫に頼らずとも花粉なしで自己結実ができる。かくして、どんどん繁殖して種をとばすわけだ。産地の乾燥しがちな土地条件と都市部のそれとが似ていることもあるだろう。
 やっかいなことに、最近では「一見セイヨウ、実は在来種との雑種」というケースが増えている。セイヨウの大部分の花粉は発芽能力がないが、中には正常に発芽するものもあり、そんな花粉が在来種の雌しべについてしまうためらしい。その違いは葉などからの酵素タンパク質を抽出してみないと区別できない。大阪や愛知では、セイヨウタンポポと思われる種を調べたところ、ほとんどが雑種だったという調査結果も報告されている。奈良県の実情はどうだろう。調べてみる必要がありそうだ。
 どれもかわいいタンポポには違いないが、できるなら生粋のカンサイタンポポが健在でいられる環境を残していきたいものだ。